アフリカ在来知の生成とそのポジティブな実践に関する地域研究


第1回研究会報告 (2007年5月2日)


エチオピア南西部「野生コーヒーの森」の成立過程

(The Course of “Wild Coffee Forest” Formation in Southwestern Ethiopia)

伊藤義将
(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)




 コーヒーの原産地はエチオピア南西部のカファ地方であり、様々な議論があるものの「コーヒー」という名もカファ地方の「カファ」が語源であると言われている。現在もエチオピア南西部には「野生コーヒーの森」が広がり雨季が明ける10月ごろから「野生コーヒー」を採集するためにエチオピア各地から人々が押し寄せる。カファ地方の北側、標高1600m程度に位置するジンマ地方ゲラ行政区南部にも「野生コーヒー」が豊富に茂る森を広域に渡って見ることができ、50年以上も前から人々はコーヒーの実が実る頃に町や農村から「野生コーヒーの森」に2、3ヶ月、一時的に移り住み採集作業を行う他、草刈、養蜂、放牧といった活動を行ってきた。

コーヒーの森とその中での放牧
コーヒーの森とその中での放牧

 このような「野生コーヒーの森」で植生調査を行ったところ、毎年のようにコーヒーの採集や草刈が頻繁に行われ樹冠がある程度開いている場所の植生はコーヒーの構成比が高く、人があまり立ち入らず草刈などが行われていない樹冠が閉じ、暗く湿った場所の植生では低いコーヒーの構成比が示された。このようなことから、採集、草刈という人為的攪乱が「野生コーヒー」に適した環境を作り上げていることが考えられた。

 しかし、人々は現在「野生コーヒー」が豊富に茂る場所に以前コーヒーは少なく、養蜂や木材の伐採活動のみを行っていたと語る。森林内には養蜂箱に適したOlea welwitschiiCroton macrostachyusの他、木材として利用価値の高いCordia africanaPoteria adolfi-friedriciも見ることができる。そして、森林内には伐倒されたと推測できる倒木及び、伐採の痕跡と考えられる切株が多数確認された。伐倒、伐採という一見、森林に悪影響を与えると考えられる行為が森林内にギャップを作り出したことによって「野生コーヒー」の成長が促進され、現在のような「野生コーヒー」の多い植生が構成されたということが示唆された。


森の中で地上に落ちたコーヒーの実を採集する少女
森の中で地上に落ちたコーヒーの実を採集する少女

森のなかでコーヒーの乾燥
森のなかでコーヒーの乾燥

蜜洞作成のために樹皮を剥ぐ人々
蜜洞作成のために樹皮を剥ぐ人々













 

更新日: 2007年8月2日 | 作成者: 事務局